IMTEI    免疫コラム                

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第1回 免疫のしくみと免疫異常


 免疫とは、疫(病気)を免れること、または身体が持つ病気を治す力です。しかしながら、免疫のもつ本来の意味は、自己と非自己を見分け、さまざまな環境に柔軟に適応できる生体の恒常性を維持するしくみと考えられています。非自己である異物は抗原と言われ、微生物、花粉、食物、環境ホルモン、自分や他人の組織、癌細胞など膨大な数と種類があります。このコラムでは免疫のしくみと免疫異常、特に自己免疫疾患について解説します。 

免疫は自然免疫と獲得免疫に分かれます。自然免疫とは、先天的に備わっている抵抗力です。一方、獲得免疫とは、例えば、一度“ はしかウイルス ”にかかると、免疫学的な記憶が働き、二度目にはこのウイルスをやっつけてくれる、言わば後天的に得られる抵抗力です。獲得免疫はさらに液性免疫と細胞性免疫に分かれ、白血球の仲間であるリンパ球がその主役を演じます。液性免疫の主役はBリンパ球から作られる抗体です。抗体は1890年、ベーリングと北里柴三郎によって発見されたタンパク質です。抗体は抗原を“ カギとカギ穴 ”の関係で捕らえる言わば手錠のようなもので、抗体はこのしくみを利用して微生物の侵入を防いだり、癌細胞を排除したりします。抗体にはIgG、IgM、 IgA、 IgE、IgDの5種類があり、それぞれ機能的な役割を果たしています。細胞性免疫の主役は3種類のTリンパ球です。キラーTリンパ球 (Tc : CD8) はウイルスに感染した細胞や癌細胞を殺し、ヘルパーTリンパ球 (Th: CD4) はインターフェロンなどの化学物質を作り、さまざまな攻撃指令をだします。ヘルパーTリンパ球はインターフェロンγやインターロイキン2を分泌するTh1細胞、およびインターロイキン4とインターロイキン10を分泌するTh2細胞に分かれます。サプレッサーTリンパ球 (Ts : CD8) は過剰な免疫応答にブレーキをかける役割をしています。その他、白血球の仲間である好中球、マクロファージ、NK細胞も活躍します。好中球やマクロファージは抗原に出会うとアメーバ—のように触手を伸ばしてその抗原を食べ消化します。NK細胞は癌細胞を早い時期に殺す働きがあります。
 
 自己免疫疾患とは、免疫機能が低下するため、免疫システムが自分の細胞や組織を誤認して攻撃してしまった結果出てくる症状を言います。自己免疫疾患には、慢性関節リウマチ、多発性筋炎、膠原病、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマト-デス、橋本氏病、ベーチェット病、シェーグレン症候群、甲状腺機能亢進性、自己免疫性肝炎など数多くの病気があります。
自己免疫疾患の原因は、環境および遺伝因子が密接に関わっていますが、特にヒト白血球抗原(HLA)の遺伝的多型性が重であると考えられています。自己免疫疾患の治療にはステロイドホルモン剤などの免疫抑制剤が広く使用されていますが、慢性関節リウマチに対しては、抗サイトカイン抗体などの生物製剤が有効との報告もあります。一方、ヘルパーTリンパ球のTh1とTh2細本来、恒常性常性(Th1/Th2 バランス)を保っていますが、このTh1/Th2 バランスがどちらかに片寄ることが、自己免疫疾患への感受性を増加させるという考え方があります。自己免疫疾患は大別して臓器特異性のものと、全身性のものとに分類されますが、臓器特異的自己免疫疾患は、Th1細胞優位の環境で症状が発症するとえられています


第2回 腸管免疫

腸管はわれわれの食べたものを消化・吸収して、身体を構成するためのエネルギー源を得るための臓器です。一方、最近の免疫の研究によって、腸管は最も大規模な免疫臓器であることも明らかになってきました。このコラムでは腸管免疫について解説します。

腸管にはわれわれの身を守るための安全装置があります。それが腸管免疫です。腸管はリンパ球の系統発生した母体であり、多くの異種蛋白質抗原を無害化する働きがあります。また、腸管は副交感神経支配下にあるため、腸管免疫を活性化することは副交感神経を刺激することでもあり、結果的には体調を良好に保つための有効な手段にもなると考えられます。多くの気は交感神経緊張の持続によってもたらされため、腸管免疫を活性化することは副交感神経の刺激をもたらすと共に病気を予防する手だてにもなるのです。一般に免疫システムは、抗原提示細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、そして抗体によって構成されています。これらの中で、TおよびBリンパ球、そして抗体は、骨髄、胸腺を除いても、約50%以上が腸管組織に存在しています。そしてこの細胞群が、腸管での病原微生物の侵入を防御しているのです。また、腸管には独特の免疫器官や免疫細胞が存在しています。特に、パイエル板、腸管上皮間リンパ球は腸管での免疫応答に密接に関与しています。


第3回 アレルギーの予防

 アトピー性皮膚炎や気管支喘息を代表するアレルギー疾患が激増しています。その原因の一つは、われわれの生活環境が都会型パターンに変化したためと言われています。このコラムではアレルギーとその予防について解説します。

アレルギーとは、免疫の異常によっておこる病気です。免疫とは体に入ってきた異物(抗原)を排除して、体を守ってくれるしくみです。免疫は主に血液中にある抗体(IgM、IgG、IgA、IgE、IgDの5種類)や白血球(リンパ球や顆粒球など)が関わっています。ところが、時としてこの免疫が過剰に働き過ぎて、自分自身に害を与えることがあります。これがアレルギーです。アレルギーにはI 、II 、III 、IV 型の4つのタイプがあります。アレルギーの原因となるものをアレルゲンと言い、花粉、ダニ、ハウスダスト、動物の毛、卵、牛乳、薬などがあります。一般に言われるアレルギーはⅠ型です。体内にアレルゲンが侵入してくると、Bリンパ球はIgE抗体を作り出します。そして肥満細胞の表面にIgE抗体が結合していきます。この状態で、再びアレルゲンが体に入ってくると、肥満細胞からヒスタミンが放出されます。ヒスタミンには、血管を広げたり、筋肉を収縮させたり、神経を刺激したりする働きがあり、これが気管支でおきると喘息、皮膚でおきるとアトピ-、目や鼻でおきるとアレルギー症状となります。また、年齢によってアレルゲンが変わり、アレルギーの症状が変わる現象をアレルギーマーチと呼んでいます。

アレルギーの発症にはヘルパーTリンパ球のTh1/Th2細胞のバランスが関与しています。、Th1細胞は細胞性免疫を亢進し、逆にTh2細胞は液性免疫を亢進します。IgE抗体の関与する気管支喘息はTh2細胞が優位に働くと言われています。すなわち、アレルギー発症にはTh1/Th2細胞のバランスが大きく関わっているのです。また、アレルギーになりやすい人はTh2細胞からインターロイキン4が多量に分泌され、過剰のIgE抗体が作り出されます。一方、アレルギーになりにくい人はTh1細胞がこれらの反応にブレーキ をかけています。I 型アレルギーは遺伝すると言われています。実際、アレルギー素因を持った両親から産まれた子供は、アレルギー素因になる確率が高いようです。


第4回 癌と免疫

 国内での死亡順位の第一位は癌です。以前は胃癌が多かったのですが、最近では肺癌、大腸癌および乳癌が多くなってきました。これは食生活の欧米化や発癌の多様性が原因であると考えられています。このコラムでは癌の発生メカニズム、癌免疫の現状について解説します。

 癌は正常細胞の遺伝子が化学物質、喫煙、放射線、ウイルスなどで傷つけられこと(遺伝子の突然変異)で発生します。正常細胞が癌になる決定的な要因は癌遺伝子(ras、src、mycなど)によるものです。すなわち、癌の発生メカニズムは、遺伝子の突然変異と癌遺伝子をコントロールする癌抑制遺伝子の誤作動で発生するのです。また、最近は癌幹細胞の異常増殖との関係も注目されるようになってきました。一方、ウイルスの中には癌遺伝子を運び、癌をひき起すものがあります。成人Tリンパ球白血病ウイルス、EBウイルス、ヒトパピローマウイルス、肝炎ウイルスなどが代表的な腫瘍(癌)ウイルスです。一方、細胞が癌化すると、癌細胞から正常細胞とは異なる物質が逸脱してくることがあります。これを癌(腫瘍)特異抗原または腫瘍マーカーと言っています。代表的な腫瘍マーカーとしては、αフェトプロテイン(AFP)、がん胎児抗原(CEA)、CA19-9などがあり、癌の診断や予後判定等に用いられています。

 われわれの生体には、癌の発症を防ぐ免疫監視機構があります。癌細胞を攻撃するのは主にキラーTリンパ球、NK細胞、マクロファージです。キラーTリンパ球は大腸癌、肝臓癌を、NK細胞は初期の広範囲な癌細胞を攻撃します。マクロファージは腫瘍壊死物質(TNF-α)を出して癌細胞を破壊します。また、抗体も癌細胞に対して攻撃を加えます。

  現在、抗癌剤、生物製剤、機能性健康食品、精神的サポートなどが癌の免疫療法に取り入れられています。特に、癌の患者からリンパ球を取り出し、癌細胞を破壊できるまで能力を高めて、再び患者に戻す“養子免疫療法”は有効な癌治療法です。さらに、癌抑制遺伝子(p53遺伝子)を直接癌細胞に組み込んで、癌細胞を死滅(アポトーシス)させる遺伝子治療も試みられています。この中で最近特に注目されているのが、機能性健康食品による免疫療法です。機能性健康食品ははマクロファージ、NK細胞キラーTリンパ球などの免疫細胞を活性化することからbiological response modifier (BRM)による癌の免疫療法として期待されています。

ストレス刺激は神経系、内分泌系、免疫系に悪影響を与えます。過度のストレスを受けると副腎皮質からアドレナリンや糖質コルチコイドが分泌してきます。一般に、アドレナリンは免疫力を高めますが、糖質コルチコイドは免疫力を低下させます。すなわち、糖質コルチコイドの作用は免疫監視機構を低下させ、癌が発生しやい環境をつくってしまうのです。最近では、ストレスを解消し、さらに免疫力を高める癌の免疫療法としての“ユーモアテラピー”が国内外でも注目されています。

 癌に打ち勝つためには、身体に備わっている免疫力を高めておくことが大切です。自身の免疫力をしっかりつけて健康な毎日を送りたいものです



第5回 感染予防

わたしたちは、日々、細菌やウイルスなど多くの微生物の危険にさらされています。 特に乳幼児や高齢者は免疫力が低いため、これらの微生物によって重い病気になることもあります。このコラムでは、感染とは何か、感染を予防するためにはどのような対策を取れば良いのか解説します。

感染とは、病原微生物が体に侵入・増殖し、異常をもたらすことです。また、これらの微生物の感染によっておこる病気を感染症と言っています。感染には顕性感染、不顕性感染、初感染、再感染、日和見感染、病院内感染、母子感染、輸入感染など多くの種類があります。特に、免疫力の低下した高齢者や乳幼児に対して病原性を示す日和見感染は重要です。代表的な感染症としては、インフルエンザ(流行性感冒)ですが、最近は生活環境などの変化で感染症の様相が変わってきました。大腸菌O-157による腸管出血性大腸菌感染症、黄色ブドウ球菌(MRSA)による病院内感染、エイズ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、結核など、これらは新しくまたは再び出てきた感染症です。

食中毒も重要な感染症です。細菌やウイルスなどが原因で発生します。食中毒は梅雨時や夏に多いイメージがありますが冬にも発生します。その原因は
ノロウイルスによるもので
冬から春先にかけて発生するのが特徴で、食べてから1~2日で、吐き気やおう吐、腹痛、下痢、軽度の発熱などがおこります。他にも腸炎ビブリオ、サルモネラ菌、カンピロバクター、ブドウ球菌、病原性大腸菌などさまざまな食中毒菌がいます。

感染防御には、生体の液性免疫と細胞性免疫が共同で働きます。細菌から作られる毒素は抗体によって中和され、細菌に結合した抗体は、好中球やマクロファージの食菌作用を助けます。一方、キラーTリンパ球は、ウイルスに感染した細胞に攻撃を加え、“ パーフォリン ”と言われる蛋白分解酵素を放出して感染細胞を死滅させます。また、ヘルパーTリンパ球もインターフェロンなどの化学物質を放出し、ウイルスの増殖を抑えます。最近、エイズウイルスに感染しても長時間発症しない患者の中に、CCL3L1遺伝子にコードされるCCR5受容体に変異をもつ人が多いことがわかってきました。エイズウイルスは細胞に感染するときCCR5受容体に結合しますが、この受容体に変異がある患者はエイズウイルスに感染しにくいと言われています。CCR5受容体をターゲットにしたエイズワクチンの研究も飛躍的に進展するものと思われます。

 感染予防の第一歩は、日頃から微生物に負けない免疫力をつけることや、手洗いやうがいで微生物を殺菌することです。近年、カテキン、ステビア、プロポリス、ハーブなどが天然の抗生物質として有益であることがわかってきました。一方、ワクチンによる予防接種も、感染予防に効果があります。しかしながら、インフルエンザウイルスのようにウイルス遺伝子が突然変異を起し、その抗原が変化しやすい場合はワクチンで十分な免疫力を期待できないこともあります。そこで、遺伝子工学を利用した改良ワクチンが開発されています。また、血液1cc中のヘルパーTリンパ球の数が200個を下回ると、いろいろな日和見感染症が起こってくることもわかってきました。ヘルパーTリンパ球の数で感染症の発症をある程度予測できるようです。



第6回 ストレス対策

現代はストレス社会です。私たちが健康を維持・増進していくためには、ストレスをどう防ぐか、またどうつき合っていくかが重要な課題になってきます。このコラムではストレスとはいったどのようなものなのか、またストレスを予防するためにはどうすれば良いのか解説します。  

ストレスは外部からのストレス刺激(ストレッサー)によってひき起こされる身体の変調です。ストレッサーには、寒暑、騒音、飢え、感染、過労、睡眠不足、精神緊張、人間関係、受験などさまざまなものがあります。しかし、ストレスはすべて悪いものではなく、適度の緊張感は身体や心の力を強めてくれる言わば「人生のスパイス」のようなもので、われわれが生きていくためには必要な存在です。身体が過剰なストレスを受けると神経系、内分泌系さらには免疫系のバランスがくずれてきます。代表的なストレス反応として、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのカテコールアミン類が関係する交感神経系の反応があります。その結果、心身症、胃潰瘍、神経性皮膚炎、高血圧、片頭痛、起立調節障害などの病気にかかりやすくなってしまいます。一方、ストレスの中で多くの人が実感しているのが胃の痛みや胃潰瘍です。胃潰瘍の原因の9割はピロリ菌によるものですが、ピロリ菌に感染した人が必ず胃潰瘍になるわけではありません。そこにストレスが加わることで胃潰瘍になるケースが多いと言われています。

ストレスに負けない身体をつくるためには、バランスのとれた栄養素を摂取することが必要です。ストレス予防に関係のある栄養素には、タンパク質、ビタミンAとC、βカロチン、ミネラル、糖質などがあります。身体にストレスが加わると、副腎皮質から多量の副腎皮質ホルモンが分泌され、体内のタンパク質が分解されたり、ビタミンAやCの不足がおこったりします。その結果、各臓器の結合組織から出血しやすくなったり、粘膜を保護する働きが低下したりします。さらに、体内で発生してくる活性酸素による「細胞の傷」を修復できなくなったりします。ですから、ストレス状態ではタンパク質、ビタミンAと C、 βカロチン、ミネラル分を十分に摂取しなければいけません。糖質はタンパク質や脂質と同じように、われわれが活動するためのエネルギーをつくり出す重要な栄養素です。特に、糖質はエネルギー獲得に必要なアデノシン三リン酸(ATP)を作り出すのに必要な栄養素です。ATPは細内の通貨と呼ばれ、われわれが活動するためのエネルギー源として大切な働きをしています。ですから、ストレス状態にある時は糖質を積極的に摂取し、ATPを細胞内に十分蓄積しておかなければいけません。

ストレスを解消する方法には、自律訓練法、イメージリラックス法、アロマセラピー 法などさまざまなものがあります。また、最近ではストレスを科学的に把握するための新しいストレス診断マーカーの開発も進んでします。しかし、ストレスを解消するためには、まずストレスに負けない身体をつくることが大切です。



第7回 環境ホルモンへの対応

私たちの身の回りには数多くの環境ホルモンが存在し、私たちの身体にさまざまな悪影響を与えています。このコラムでは環境ホルモンとはいったいどのようなものなのか解説します。

 環境ホルモンとは、生体内のホルモンの合成、分泌、体内輸送、結合、作用に影響をえ、それによって子孫あるいは集団に害な影響をひき起こす外因性内分泌撹乱化学物質と定義されています。環境ホルモンの種類には、ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル(PCB) 、エチニールエストラジオール、ビスフェノールAなどがあり、その発生源は、大気、水、食品、食器、母乳、家庭用品、医薬品・医療用具など実にさまざまなものがあります。環境ホルモンの特徴としては、その構造が簡単でタンパク質、多糖類よりも小さく、水に溶けにくく、油に溶けやすいことです。また、体内で分解されにくくそのままの形で残ること、さらに、ごく微量で、例えば100万分の1(ppm)や1兆分の1(ppt)の量で作用することです。

環境ホルモンの作用としては、女性ホルモン(エストロゲン)作用、エストロゲン阻害作用、男性ホルモン(アンドロゲン)作用、抗アンドロゲン作用、甲状腺ホルモン撹乱、副腎皮質ホルモン撹乱などがあります。環境ホルモンは生体内に入ると、脂肪組織、血液、母乳中に入り、内分泌撹乱を起こします。その結果、精子や卵子の形成異常、メス化現象、子宮内膜症、胎児の発育障害、学習障害、行動異常、免疫機能障害、発癌をひき起します。特に、神経細胞表面のγアミノ酪酸のレセプター(ギャバレセプター)の機能を破壊する神経障害は大変危険なことです。

一度体内に入ってしまった環境ホルモンを効果的に排出する方法として、食物繊維と葉緑素があります。血液中に移行した環境ホルモンは、脂肪とともに肝臓から胆汁として排出され、腸で再び体内に吸収されます。しかし、食物繊維や葉緑素は環境ホルモンを吸着し、腸内での再吸収を抑制することができます。食物繊維としては、干しひじき、干しシイタケ、小麦、枝豆、ごぼう、一方、葉緑素としては、小松菜、チンゲンサイ、ホウレン草、キャベツ、ブロッコリーなどがありますしかし私たち現代人にとっては、毎日多くの食物繊維や葉緑素を規則正しく摂取することは大変むずかしいのが現状です。そこで、安全で毎日気軽に摂取でき、また、さまざまな環境ホルモンを吸着し、体外に排出してくれる天然の機能性健康食品が望まれるようになってくるのです。

これから私たちは、環境ホルモンこそが「類の運命を握るカギ」であると言う意識をもって生活しなくてはいけません。そう言う意味からも、環境ホルモンの悪影響からわれわれの健康を守る有力な「手だて」を早急に考えることが必要になると思われます。


                   
第8回 老化防止(アンチエイジング)

年を取ると白髪、皮膚のシワやシミ、関節の痛み、物忘れ、老眼などさまざまな身体の異常が出てきます。しかし、年を取ることで一番嫌なことは、高血圧、動脈硬化、脳卒中、糖尿病、癌、リウマチ、白内障などの病気にかかりやすくなることです。このコラムでは、老化とは何か、老化を予防するためにはどうすれば良いのか解説します。      

人の平均寿命は、平成15年には日本人男性78.36歳、女性85.33歳で、日本は世界一の長寿国になりました。その理由として、医学の進歩、遺伝的要因の解明、環境衛生の改善などがあげられます。老化とは、生物学的には細胞の老化(寿命)と考えられています。老化のメカニズムにはいくつかの仮説があります。(1)寿命プログラム説は、老化に関わる遺伝子がある特定の遺伝子にプログラムとしてが組込まれていると言うものです。早期老化症(ウエルナー症候群)はその代表的な病気です。(2)寿命エラー説は、細胞が分裂する時に遺伝子が傷つく(塩基配列の乱れ)もので、その結果、遺伝子の誤作動(転写・翻訳エラー発生)が生じ細胞が老化していくものです。遺伝子を傷つける主な原因は、紫外線や活性酸素です。(3)クロスリンク説は、細胞の中のさまざまなタンパク質が橋かけ(クロスリンク)状態になり、細胞の動きが止まってしまうことです。脳の神経細胞に出現するβアミロイドが原因で発症するアルツハイマー型の痴ほう症がその代表です。(4)細胞分裂説は、細胞が分裂するたびに染色体の末端のテロメアが短くなることです。その結果、染色体が結合しやすくなり、細胞の動きが不安定になり細胞の老化が起こります。

最近、年齢に応じた最善の健康状態(オプテマルヘルス)を保つことが求められるようになってきました。その中に、長生きのための食事に関する項目があります。日常生活活動動作の良好な百歳老人の栄養摂取の特徴は、低エネルギー、低塩食、野菜の摂取が多い、海藻類の摂取が多い、動物性たん白の摂取が多い、少量の飲酒をするなどです。一方、カロリー制限も老化防止には有効です。線虫を用いた研究から、線虫は栄養状態(カロリー摂取)によって長寿モードと生殖モードのスイッチを巧みに切り替えているようです。



第9回 肥満の予防

 肥満ならぬ肥満症は、BMIBody Mass Index)値25以上、内臓脂肪100cm2以上、糖尿病、高血圧、心臓病などの合併症を2つ以上もっていることと定義されています。最近、肥満は食生活以外に遺伝的な素因が深く関わっていることがわかってきました。このコラムでは、肥満のメカニズムと肥満の予防について解説します。

 以前までは、肥満は食べ過ぎによるものと考えられていましたが、肥満遺伝子(ob 遺伝子)の発見以来、肥満は遺伝的な素因が強く関わっていることがわかってきました。一般に肥満は摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスによって決まります。ですから、摂取エネルギーをいくら制限しても消費エネルギーが少なければやはり肥満になります。国民栄養調査によると、カロリー自体は昭和30年代の方が高いのですが、平均摂取カロリーは昭和50年には2226キロカロリー、その後は漸減し、平成12年には1948キロカロリーになっています。つまり日本全体では小食化しているのですが、脂肪の摂取が年々高くなっており、どうやらこのことがわれわれを肥満に導いているようです。

 肥満は白色脂肪細胞への脂肪の蓄積が主な原因です。一方、褐色脂肪細胞は、細胞内のミトコンドリアで熱発生を促し、過剰な脂肪を溶かす働きがあります。ですから、この褐色脂肪細胞が活発に働いていると肥満を予防することができるわけです。また、これらの脂肪細胞からは熱発生やエネルギー消費に関わるレプチンと言われるホルモンが分泌されます。ですから、遺伝的に脂肪細胞からレプチンが出にくい人は肥満傾向になるわけです。

最近、脂肪細胞から分泌されるアデポネクチンと言うホルモンが発見されました。アデポネクチンには脂肪燃焼の促進やインスリン抵抗性を改善する働きがあります。また、アデポネクチンはβ3アドレナリン受容体を刺激することで、基礎代謝を上げ、蓄積される脂肪の量を抑える働きがあることもわかってきました。ちょうど自動車をアイドリング状態にしておけば、停車中でもガソリンを消費している作用に似ています。将来的にはアデポネクチンによって肥満を予防できるようになるかもしれません。
 一方、肥満治療薬としてオリスタット(商品名ゼニカル)が用いられていますが、この治療薬は胃とすい臓の脂肪分解酵素の働きを抑え、脂肪の吸収を30%抑制することで体重を減らす作用があります。しかし、肥満症の位置づけが曖昧であるため、治療薬の目標をどこにおけば良いか、多くの問題点も残っています。また、ダイエットですが、一旦ダイエットに成功してもそのリバウンドが出てくる可能性もあります。このことから、どうやら肥満を予防する第一歩もいかに身体のバランスを上手く調節していくかにかかっているようです。

☆ 体脂肪率:BMI(Body Mass Indexの略)値が一般的に使われ、体重(kg)÷身長(m)2の式で算出します。



第10回 健康な脳

人生を有意義に過ごすためには、十分にはたらく脳、すなわち、健康な脳が必要です。このコラムでは、健康な脳とはどのような脳なのか、どうすれば健康な脳を獲得できるのか、さらに健康な脳を鍛えて守るにはどうすれば良いのか解説します。

 脳は脳幹、小脳、大脳、大脳辺縁系そして大脳新皮質に分類されます。脳幹は、呼吸、脈拍、体温などの生理機能を調節し、小脳は、平衡感覚、運動感覚を調節します。大脳は、好き嫌い、喜び、怒り、悲しみ、気分などの感情を生む場所です。大脳辺縁系は、扁桃核、側坐核、海馬の3つに分かれ、やる気や記憶に密接に関わっています。また、脳は前頭葉(思考、判断、想像)、頭頂葉(感覚、痛みの感覚、筋肉の収縮)、側頭葉(情報の長期保存、情報の理解)、後頭葉(視覚情報の処理)に分類することもできます。

脳には約千百億個の神経細胞(ニューロン)があります。脳のそれぞれの部分は神経細胞(ニューロン)でつながっていて、神経細胞と神経細胞は、シナプスを介して脳内神経伝達物質のやり取り、すなわち情報伝達を行っています。脳内神経伝達物質には、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、セロトニン、ギャバ(GABA)など多くの種類があります。

 健康な脳をつくるには、栄養素の補給、脳の休養・睡眠、脳の訓練が必要です。その中で栄養素は特に重要です。タンパク質、糖質、脂質、ミネラル、ビタミン類は、脳内神経伝達物質の細胞内伝達を円滑にするためにも大切です。例えば、アセチルコリンが不足すると神経のシグナル伝達がスムーズにいかなくなります。しかし、体内でアセチルコリンに変換できる脂質の一種であるレシチンやDHA(ドコサヘキサエン酸)を積極的に摂取することで細胞内情報伝達の不足を補うことができます。一方、運動で筋肉を鍛えて脳を活性化することも必要です。また、ボケない脳をつくるためには、タバコの煙から発生する一酸化炭素とアセトアルデヒドによる神神経細胞へのダメージを避けることも大切です。

 健康な脳をつくるには、脳に働くサプリメントの開発が重要なテーマになってきます。すなわち、「ブレイン・フィットネス・サプリメント」の開発を目指し、脳内のセロトニンの量を増やすこと、ドーパミンの分泌を促進してパーキンソン病を予防するなど、今後期待される課題です。


第11回 母子保健

閉経前後に起きるさまざまな身体の不調を更年期障害と言います。この時期は加齢にともない急速に卵巣の働きや女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下し、さまざまな不快な症状が出てきます。

 更年期障害とは、閉経前後(日本人の平均閉経年齢は50歳)に起きる身体の不調を言います。その原因としてエストロゲンの分泌不足、自律神経失調、精神的ストレスなどがあります。一般に閉経後に現れるケースが多いのですが、閉経したら必ず更年期障害になるわけではありません。
更年期障害は早期に出現する冷え、のぼせ、動悸、異常な発汗などの不定愁訴と、何年か遅れて発症する骨粗しょう症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症、皮膚の萎縮や色素沈着、関節疾患などがあります。特に、骨粗しょう症は骨から多量のカルシウムが溶け出るため軽い衝撃でも骨折しやすくなります。更年期障害は、骨粗しょう症や高脂血症と密接に関わると共に、脳の老化現象との関連性も指摘されています。医学の進歩によって、ほかの多くの病気は克服されてきましたが、更年期障害に対する治療はなかなか進みませんでした。そのため、高齢の女性を悩ます深刻な病気は、多くの点で更年期障害が関係するようになってしまいました。また最近では、エストロゲンの脳機能に対する作用が明らかにされつつあり、老人性痴呆症、特にアルツハイマー型痴呆症と更年期障害との関係も注目されています。

 更年期障害の診断は自覚症状のほか、血液中のエストロゲンの量、さらには脳下垂体から分泌される性腺(卵胞)刺激ホルモンの量などを参考にします。また、更年期障害の治療としては、エストロゲン補充療法が行われています。その他、精神安定剤や漢方療法などが用いられることもあります。一方、更年期障害の対策として、さまざまな食品や機能性食品が利用されるようになってきました。
黒い食品(黒ごま・黒豆・黒米など)の中には、抗酸化作用があるものが多く、体内の活性酸素を防ぐ働きがあると言われています。特に、黒い色素にはアントシアニンが多く含まれ、癌やさまざまな病気を防ぐ、強力で持続性のある抗酸化作用があります。また、カモミールは、ドイツで「お母さんのハーブ」と呼ばれています。これは、カモミールが月経不順や更年期障害の緩和に用いられてきたからです。玄米は豊富に含まれるビタミンB群が自律神経の正常化に極めて有効であることから、更年期障害の緩和食材として利用されています。

 
一方、更年期障害と共に女性を悩ませる婦人科の疾患に、月経困難症があります。月経困難症は月経時に日常生活に支障を来たすほどの下腹部痛や腰痛を伴うもので、患者数は1200万人と推定されています。その原因の一つが子宮内膜症です。女性の健康を守っていくことは、母子保健の立場からも大変重要なことです。                            


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